境界線はどこにあるか！？｢駅そば｣の東西の違いな件

　駅構内やホームにある小さな建物、そこからぷーんと漂う香りに誘われるように店に入る。
そう、そこは「駅そば」。
そばを選ぶかうどんにするか、たぬきにするかきつねにするか、いやいや丸く整ったかき揚げか、 それに生卵を投入するか…メニュー選びは悩むところだが、次の電車が来るまで時間がない。
サッと注文して、 美味いそばを少しでも長く味わいたいものだ。
そしてこの駅そば、あのレディー・ガガも大好物だそうで、 来日するたびに東京駅や品川駅の駅そばで舌鼓を打っているところを目撃されている。
日本独自の文化である駅そばは、何かしら彼女の感性を刺激するものがあるのだろう。

　そんな、身近だけど意外と知らない「駅そば」を研究したのが『東西「駅そば」探訪　和製ファストフードに見る日本の食文化』 （鈴木弘毅/交通新聞社）だ。
あまたある店を取材し、何が違うのか、美味しさはどこにあるのかなどを真摯に追い求めている。
ちなみに著者の鈴木氏は子どもの頃から駅そばを食べていたそうだが、今から約20年前の1995年、 JR山陽本線姫路駅にある店で「えきそば」というメニューを注文したところ、中華麺を和風だしのつゆで食べるという そばが出てきて「なんだ、この黄色い麺は？」と唖然としたことが駅そばを研究する始まりだったそうだ。
中華麺と和風だしという組み合わせは今では普通になってきているそうだが、何の前情報もなく接するインパクトは相当なものだろう。

>>2以降に続く

　そばやうどんで関東と関西、最大の違いというと「醤油」だが、その境界線はどこにあるか知っているだろうか？
本書によると、関東で使われる濃口醤油と関西で使われる薄口醤油の境目は、JR東海道本線は関ケ原駅、
JR北陸本線は富山駅、JR関西本線は愛知と三重の県境にあるそうだ。しかし鈴木氏はそこからさらに一歩踏み込み、
薬味のネギは石川まで「白ネギ」を使っているので（関西では青ネギが主流）、福井県以西、敦賀の以南・以西を関西圏
としているそうだ。ちなみにこの記事の冒頭で「ぷーんと漂う香りに誘われる」と書いたが、視覚よりも嗅覚が先に反応する
というのは関東の駅そばで多いことだそうで、ダシや醤油、そして使われている水（関東のほうが関西よりも若干硬度が高い）も
関係しているそうだ。

　こうした麺やつゆが違うことを始め、同じメニューでも関西でたぬきそばを頼むと関東でいうところのきつねそばが
出てくる不思議や、月見そばの卵の固まり具合の違い（関東は生、関西はつゆをかけて固める）なども取り上げ、
さらに関東ならではのイカ天や春菊天、唐揚げやトンカツが乗っているメニュー、そして関西ならではのタコ焼きが
乗ったそばやフワフワの卵とじそば、牛ホルモンを使ったかすそばなどが紹介されている。

　手軽な「駅そば」とあなどることなかれ、これほどまで多岐にわたるメニューがあるのだ！

　そしてすべての駅そばのメニューの中で、もっとも人気が高いのは「天ぷらそば（天ぷらうどん含む）」なのだそうだが、
この天ぷらそば、関東で頼むとほぼ例外なく店で揚げた丸いかき揚げが乗ったものが出てくるが、
関西では「天ぷら」と「かき揚げ」は区別しているという。関西で「天ぷらそば」と頼むとどんなものが出てくるのか…
それは本書でぜひ確認して欲しい。

　　　　　　↑
東西の境界線　ここ

どんなものが出てくるの？
たこ焼き？
お好み焼き？

へっ？

不味いとは言わないよ

不味いとは